カテゴリー: 02 決める力

2009年06月29日

THE21 「灼熱」 6:アイテム

今日、「お問い合わせ」経由で解答案を寄せられた方には「解答案」をお送りした。
お楽しみに。

さて最後に、アイテムの取捨選択時の考え方に関して補足しておく。
「資源集中」と「代替可能性」だ。

ある効用を達成するために、一つのアイテムで十分なこともあるだろうが、そこは慎重に考えたい。
最上位の効用を実現できなければ、終わりなのだ。
だから、必ず実現させなくてはならない。そのために普通は、資源集中が必要だ。

もう一つは代替可能性。
星で何とかなるならコンパスは要らない。ライターで暖がとれるならコートは要らない。
資源が限られるときには、そういった思い切りが必要だ。

特に、実現すべき効用が1つでなく2~3あるときには資源集中だけでは生き残れない。

さて、以上で「灼熱」の解説を終わろう。
砂漠で生き残るのは、大変だ・・・

2009年06月26日

決める力:サバイバル「墜落」を追加

正しく決める力』でも取り上げている「墜落」をこのwebsiteにも。

本来の課題はもう少し長文(この記事の最後に)。その他に付近の地図や季候の数字の表がある。
それらを読んで、個人としての答え、チームとしての答えを出すものだ。

サバイバル三部作(今のところ)の根幹をなすケースである。
重要思考の神髄がここに!

なお「灼熱」の解答(の概要)は、自分なりの解答を寄せて頂いた方に順次送る予定。

以下、本来の課題文。
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Plane01.jpg

状況

105日午後2時半、あなたの乗っている飛行機がケベック州山岳地帯に墜落し、救命ボートでローラ湖に浮かんでいる。パイロットは事故時に死亡してしまったが乗客は全員無傷である。岸辺には問題無く到着できそうであるが、全員腰まで水に漬かってしまった。パイロットは当局と交信をとることが出来なかった模様

・周囲の風景から、現在地は予定されていた空路より約48km南に逸れており、目的地のシェファービルからは飛行距離にして、約35km東に位置していると推定できる。シェファービルはセントロレンス川より飛行距離で480km北、ハドソン湾より724km東、大西洋沿岸地方より480km西に位置している。シェファービルへの道路はなく交通手段としては飛行機か電車しかない。出発地であるラブラドールから「遅くとも1019日までにはシェファービルに到着する予定である」とのみ連絡が当局へ送られている。

・墜落地は小さい常緑木(直径5cm)の丘に囲まれており、谷間は雑木林の生えた沼で覆われている。周辺一帯は細長い南北に走る湖に囲まれている。たくさんの川がそれらの湖を結んでいる。(地図参照)

・10月の平均気温は年により-4℃から-1℃の間を推移する。日によっては最高気温が10℃、最低気温が-18℃にまでなることもある。通常は曇っており、10日に一度しか晴れる日はない。平均1320cmの雪が積もっており、ところによっては4575cm積もっている。風速は平均57m/sで北西から吹く。

・全員、厚手の下着、靴下、毛のセーター、ズボン、手袋、帽子、羊毛のジャケットと皮のブーツを着用している。所有物はその他全員で:
現金$1,530、硬貨で50c 2枚、25c 4枚、10c 2枚、5c 1枚と1c 3枚、アーミー・ナイフ1つ(刃渡り6cmのナイフに突きぎり1つ)、鉛筆1本と地図1

2009
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2009年06月24日

田園調布雙葉 & SLOGAN講義終了

午前中は久品仏の田園調布雙葉で「発想力」講義。

夜は神田のSlogan「正しく決める力」講義

前者は高3女子向けで、後者は大学3年生を中心とした就活生向けだ。

後者の報告を先にすると、結局1830から2230過ぎまで4時間。

意識の高い学生さん達が多かったせいもあるけれど、いろいろ語ってしまった(笑)
 
まずは2時間半「サバイバル!」で「正しく決める力」演習を。

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その後、第2部と称して、1980年代のコンサルティング業界の話から、何を考えて就職したのか、今の教育活動、本の紹介まで話し、さまざまな質問に答えた。
IMG_0866mini.jpg

質問がとぎれたところで散会としたのだけれど、その後も数名が質問に。

皆の前じゃ恥ずかしいのかね。それじゃ、いかんよ(笑)

質問も全体的に、まだまだツッコミ不足。でもいくつか面白いモノもあったな。その質問に触発されて答えたわけだけれど、重要思考の4階層性の本質に気がついた人は何人いたかな。

私が最後に皆に言ったのは「Pay it forward」

この恩は、私にでなく、未来へ返すように。

田園調布雙葉では、発想力をやったのだが後半、紙コップ演習とかで意外と苦戦した。

身近なモノのヒミツに楽しんだ子も多かったが、なんでだろう、の連続に耐えられなかった子も?

紙コップでなくて文系ネタの方が良かったかな。

2009年06月19日

THE21 「灼熱」 5:手段と効用

手段は下記にあるアイテムたちだ。それに優先順位をつけるのがこのケースの目的だった。
大戦略に沿って、正しいアイテムを選ぶために、第2段階の「中目標・ 効用」はある。
 
desertTHE21.jpg

効用って何だろう。これはUtilityの日本語訳でもある。
「何の役に立つのか」ということでもある。

家電量販大手のエディオングループの中核であるデオデオは、創業当時から
「我々が販売しているのはモノではなく効用だ」と看破し、
「しかし、故障時にはその効用はゼロとなる」「ゆえに、迅速な故障修理に全力を尽くす!」
として究極の故障修理態勢である『Zサービス』を創り上げた。

その詳細は別紙に譲るものとして、つまり、炊飯器は手段であって、その効用は「ご飯が炊けること」だということだ。

「水」はモノである。ではその効用は?
water2l.jpg
当然この場合なら「飢えを癒す(水分補給)」ということになろう。

「タイヤ」もモノである。ではその効用は?
もともとは「車を支える」であろうし「パンク時のスペア」であろう。炎上している車を前に、それらの効用は、多分、虚しい。
でも、他にも大きな効用があり得る。

それは「発見の目印」だ。
07_500.jpg
燃やすことによって、相当明確な目印となり得るだろう。さて、これは目指す大戦略にとって重要だろうか?

手段が限定されている場合には、大戦略の後、効用をいきなり考えるのではなくまずはアイテムの効用を考え、分類してみる。そういったボトムアップ的なやり方も有効だ。

但し、一つのアイテムは、一つの効用しか持たないとは、限らないので注意すること。

さて、手段と効用を自身で整理してみよう!

2009年06月15日

THE21 「灼熱」 4:大戦略

desertTHE21.jpg
さて、いよいよ大戦略だ。

ダイジなことはもちろん「生き残ること」
そして前提としては「救援隊到着まで20日以上の可能性」

最寄りのオアシスまでは40kmあり、日中は40℃で砂嵐、夜はマイナス10℃という状況だ。
日中何もせずにいれば、数時間で熱中症になり、命を落とすだろう。

さて、動く(move)べきか、動かざる(stay)べきか。
それが大戦略として決めるべきコトだ。それによって、優先すべきアイテムは、大きく異なるはずだ。

但し、ここでもう二つの事実を。
一つは、もしオアシスへのmoveに成功しても、それは必ずしも「生き残る」を保証しない、ということだ。
オアシスには水と緑があるだけで、必ずしも食料があるわけではない。

もう一つは、moveにせよstayにせよ、最終的に救助隊に発見してもらうことがゴールであるということから、見つけてもらう(found)が重要である、ということだ。
かつ、砂漠の真ん中で、ヒトを見つけるのは必ずしも容易なことではない。

どうだろう。
大戦略としても、単純にstay or moveではないこと。
さまざまなオプションがあることが分かっただろうか。

まずはそこから考えてみよう。

2009年06月14日

THE21 「灼熱」 3:ダイジなこと(続)

重要思考の最上位である「大事なコト」。それは前提であり価値観であった。
前提として「時間(Time Frame)」と「スキルセット」がある。

時間に関しては、外部からの救援は20日以上掛かる可能性が高い、であった。

「スキルセット」はどうだろうか?
これはまさに解答者のレベルによる。全くの砂漠素人からサバイバルのプロまで居るだろう。
ここでは通常の体力・知力だと仮定する。

では、「価値観」は?
このサバイバル作戦で、ヒトは何を望むだろうか。もちろん日本人なら多くが素直に「生き残ること」と言うだろう。
でもアングロサクソン系なら多くが「自分の人生を自分で切り拓くこと」と答えるかも知れない。つまり、救援など待たない、という姿勢だ。

更に「生き残る」にもいろいろな状態があり得る。
「ハイリスクハイリターン」でいくのか、「ローリスクローリターン」か。それとも中庸か。

これらはまた、大戦略を考え、議論するときに戻ってくることとしよう。

2009年06月12日

THE21 「灼熱」 2:ダイジなこと

『重要思考』は、まず「大事なコト」から。

そこから「大戦略」「効用・中目標」「手段・ツール」へと進む。
なのでまずは「大事なコト」が定まらないと、話にならない。

一般には、前提や価値観、を大事なコトと置いている。
会社ならビジョンや経営目標、といったものだろう。

ここでは、前提として、さまざまな状況が設定されているが、サバイバルという意味で、特に重要なのは、時間とスキルセット、だ。
img10025012071.jpeg

状況を整理すると、
・場所はタクラマカン砂漠
・日中50℃+砂嵐、夜はマイナス10℃の可能性
・最寄りのオアシスは南南東に40km
・その先は不明

だが、時間に関して考えるとまず
・旅程はあと20日分残っている
・遭難は外部に知られていない
ことから、外部からの救援は20日以上掛かる可能性が高い。

そして、超短期で言えば
・もうすぐ夜

ということでもある。
これは大戦略がどうあろうと、外部の救援に接するまでに、この酷暑酷寒を20日以上生き延びなくてはならないことを示している。

では、この状況下で、大戦略にはどういったものがあるだろうか?
いや、その前にもう一つの前提であるスキルセットは?そして、価値観は?

これらはまた明日。

2009年06月11日

新コンテンツ「ほめる」と「灼熱」一挙公開

決める力』の根幹をなす『重要思考』
その研修材料として、よく使っているのが本でも紹介した「サバイバル」ケースだ。

普段は「墜落」「沈没」の2つを使っているが、その応用編として作ったのが、「灼熱」である。
・砂漠で遭難。燃える車の中から取り出しうる12アイテム。どう優先順位をつける!?

この問題については、これから数日を掛けて解説をして行く。

もう一つ公開は「ほめる」
重要思考の応用練習として、田園調布雙葉高校での「情報論」授業用に作ったものだ。

まずはモノ(iPod)をほめる。そして、次はヒトを、ほめる。
ほめる極意、そして、主張(ケンカでもディベートでもない)の極意、を体得するためのワークショップ教材だ。

ブログと合わせて、ご覧あれ。

2009年06月11日

THE21 「灼熱」 1:問題の解説

さて今日から「灼熱」の解説を始めよう。
desertTHE21.jpg(『THE21』 2009年7月号より)

そもそもこういった「サバイバル」ケースは、「コンセンサスゲーム」として開発されたものだ。
合意形成の難しさと方法、そして価値を学ぶためのものだ。

なので、通常は
・個人でやり、答え(優先順位)を出し
・チームでディスカッションして答えを出し
・正解と比較することで、個人得点、チーム得点を算出する
という手順を取る。

面白いことにほとんどの場合、チーム得点の平均は、個人得点の平均を大きく上回る。
これが、コンセンサスの価値、だ。三人寄れば文殊の智慧、は正しい。

同時に、コンセンサス形成の難しさも、参加者は体験することになる。
大抵のチームが制限時間内に議論をまとめられない。
議論が散漫で結局、声の大きいヒトの意見に合わせただけ。
そんな現象があちこちで起こる。

研修ではそこから、合意形成のテクニックという話に進んでいくのだが、実はそれでは足りない。
意思決定のフレームワークが揃っていなければ、そもそも議論にならないからだ。
正しい議論なき合意は、空しい。

そのフレームワークこそが「重要思考」、 ダイジなことから、大戦略、効用・中目標、手段・ツール、の3段階で考えるというものなのだ。

さあ、この「灼熱」を、重要思考で解いてみよう。
ダイジなことは何だろう、大戦略は?アイテムたちは何の役に立つのだろう(効用)?そして、大戦略実現のために、どの効用を上位とするのか!

皆さんの解答案は「お問い合わせ」へ!

2009年06月10日

本日発売THE21 2009年7月号

本日発売『THE21』に記事掲載。そこでの新作問題『サバイバル:灼熱』の考え方は明日から掲載予定。

解答例は当サイトの「問い合わせ」まで!