2022年01月21日

句読点戦争1952~2021

句読点、「。」が句点で「、」が読点、だよね。

ところが学校の教科書では、縦書きはこれで、横書きのときは読点が「,(コンマ)」なのだそうだ。
忘れてた。というか、まったく気がつかなんだ。

なんでこんなおかしなことになっているかというと、その源流はちょうど70年前のお達しにある。内閣官房長官から各省庁次官に「公用文改善の趣旨徹底について」 が発せられた。
そこでは「句読点は,横書きでは「,」および「。」を用いる」と明記された。理由は、ない。

教科書が「公用文」とも思えないが、教科書会社がそれに異を唱えるわけもなく、ずっとそのままだ。

以来、官公庁はそれに従い続け・・・・と思ったら、いつの間にか(特にワープロ、PCが普及してから)そうではなくなっていた。
2012年の調査で既に、
コンマとマルで統一している省庁は4つのみ(裁判所や法務省、宮内庁、外務省)
・都道府県・政令市では7つのみ
となっていた。
内閣官房長官からのお達しも、守ってみたり無視したり。流石、官僚である。
(ちなみに文科省はバリバリの「、」派である。あれ?)

つまりは法曹会だけが律儀にお達しを守っているわけだが、実は弁護士ももういろいろである。
2016年のアンケートによれば、39名中
・作成する文章は全て「,」 14名
・法律文書だけ「,」 6名
作成する文章は全て「、」 17名
・その他 2名
となった。
つまり裁判所に提出する訴状すら「、」という弁護士が44%もいたのだ。
この流れはもう止められない。


ところがここにまた、別の流派が登場する。
学会、というか学問というか、論文の世界である。ここでは長らく句読点は「,」と「.(ピリオド)」だった。
これももちろん理由なんてない。敢えて言えば「論文の世界の第一言語である英語に近い」くらいのことだろう。
(ちなみにKITでは、「、。」か「,.」か、どっちかに、となっている)

このちょっとした余波が、弁理士業界に押し寄せる。
特許庁はなんと「特許明細書の日本語は句読点(「、」「。」)を用いて構成する」を原則としている。でも、発明者は多く研究者であり、原稿は「,.」で書かれていたりする。
ある税理士さんがたまたま発明者の原稿にあった「,(コンマ)」をそのまま特許庁に提出したら、特許庁からの拒絶理由の1つに「『,』は日本語として適切でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない」と書かれたとか。(弁理士の日々
特許庁、流石である。きちんと理由をつけている。


こんな「公用文は横書きで(,)を使う」と定めたフシギな指針も、ついに変わろうとしている。
文化省が2021年3月に出した「報告である。そこでは、
読点には、原則として「,」(コンマ)ではなく「、」(テン)を使う
と明記された。
これに、法務省や裁判所、宮内庁は即、従うのだろうか?
それとも文化庁の報告より、70年前の内閣官房長官からのお達しの方が強いのか。

ちょっとだけ楽しみに、この戦いの行く末を見守ろう。

おまけ:少し調べたけれど、なんで1952年という戦後すぐに「日本語に英語記号(,)を混ぜろ」と、お上がなったのかは、よくわからなかった。
その方が読みやすいからともどこかに書いてあったが…?
右からの横書きのときはそうだったかもしれんけどねえ。