完璧な涙
言わずとしれた(?)、SF作家 神林長平の代表作の一つである。
『ルークの冒険』では、「形」がテーマなのだが
「完全なる流線型」
という概念が出てくる。
流線型というのはもともと厳密な言葉ではなく、流れに沿った形ならみんな流線型といえちゃうので、実際には様々な形がある。
自動車だって新幹線だって飛行機の翼だって「流線型」だ。
では「完全なる流線型」とは。
それは涙滴型(るいてきがた)の流線型だ。
翼は普通、上面は丸くなめらかだが下はフラット、しかも横方向にはまっすぐの流線型。
ソーラーカーだと、上面は曲線的だがやっぱり下はフラット。
涙のしずくのような、断面が円形の立体的な流線型こそが、そうなのだ。
かつ、
・前は丸く、後ろに長い
・一番太いところを中心に、前後比は1:6
が最適という。
何が最適?
当然、抵抗の少なさだ。
単なる円盤の抵抗係数(Cd値)は、1.17。球形だと0.47。
水泳選手だと前後にきれいに長いので、0.3くらい。
プリウスが一般乗用車中 最小で 0.28。
それに対して、涙滴型流線型のCd値はなんと
0.04
である。
つまり同じ力で、ヒトの8倍進めるわけだ。
イルカがCd値 0.06と言われているから、海獣たちの水中適応性が如何に高いかよく分かる。ペンギンもしかり。
『ルークの冒険』には、チョーヘイと言うシャチが出てくる。
スピードに命をかける若きシャチだ。
そう。
彼の姿こそが、完璧な流線型、「完璧な涙」なのだ。
ちなみに『ルークの冒険』では、ペンギンのCd値も、問題になる。
でも、だれも研究していないようなのだ。困った。
自分で測るのかいなあ・・・・