2009年05月13日

曖昧な入試のススメ その一

社会人向けの大学院では、ケースというモノを多用する。
ある企業の実際の事例を10~30ページにまとめたものだ。

コンパクトにまとまっているが、いたるところに罠が仕掛けられている。

みなが良くだまされることを幾つか挙げよう。

1 重要な点は情報も多い       (一杯書いてあることが重要な点、と思い込む)
2 情報は構造化されている    (自分で再整理しようとしない)
3 情報は正しく矛盾はない     (不整合に気が付かない、その奥にある真実を見逃す)
4 経営陣のコメントは正しい    (そこからスタートし「前提」とし独自の考えを持たない)

こういった「いじわる」を駆使して、受講生たちの「発見する目」を鍛えている、とも言える。

一方、大学生以下だとこういった機会そのものが、殆ど存在しない。

問題は答えが明確なものだけだし、それも1つだけのものがほとんど。入試などで正答が複数あると「誤った問題」として世の中から糾弾されたりする。ばかげたことだ。

「□肉□食」の穴埋め問題の答えが、「焼肉定食」でなぜ悪い。

曖昧な情報から、価値あるものを探し出す力、組み合わせて見つけ出す力はこれからの社会で必須のものたちだ。それらは同時に、学問をする力の根本でもある。学問力は、決して知識の多寡ではない。

大学入試で正答が二つあったら、新聞沙汰になり、かつ、全員に正解者と同じ点数が配分される。これほどバカな話はない。
学問であろうが世の中であろうが、ある条件下での正解は、いくつもある。

正答が二つでなぜ悪い。

例えそれが「選択肢の中に正解が1個だけあります」「それを答えなさい」という出題であったとしてもだ。
そこで「本当は2個ある!」と看破した受験者にはプラス20点ぐらいすればいい。

そういう入試が増えたら、子どもたちの考える力も上がるだろうに・・・
出題者、採点者は、大変だろうが、その価値はある。