2009年08月27日

東野圭吾のSF

東野圭吾、結構好きである。

「容疑者Xの献身」みたいに、ちょっと大味だな、と思う作品もあるが、「百夜行」は凄く良かった。

で、再びの本棚増設に際し、ならべ直しをやっていて、手に取ったのが「パラドックス13」

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ブラックホールからのエネルギー波の影響で、世界中の時間が13秒スリップする、その影響によって・・・という一種のSFだ。

細かい科学話は一切無い。ただ、SF的に言えば、知性の意味、についての提起がある。

全ての自然物は数学的確率論に支配される。太陽も月も、土も風も、草も花も。

しかし、知性あるものだけが、そこから外れている。

これは宇宙にとって、実は・・・

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人間物語的には、天は自ら助くる者を助く、という主人公の兄の言葉に、集約されているだろうか。

安易な考えをいさめつつ、無謀さの価値やら、論理・非論理の対立を見せてくれる。

その中で、出てくるのも、ヒトの意思。

時間をテーマにして、村上龍も「五分後の世界」という作品を出している。

パラレルワールド(平行世界)に滑り落ちた主人公。

そこは5分だけずれた東京。戦後、大国に分割統治された日本だった!

いずれも、SFの「圧倒的隔絶」による「テーマの純化」を発揮しつつ、高いリアリティを実現した名著と思う。

買って、4ヶ月も放置してゴメンナサイ。