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第60号 新しいハカり方への挑戦2:MEMS

ヒトは、仮説を証明するために、新しいハカり方を生み出す。しかし、新しいハカり方の真の価値はその仮説以外の答や問いを示してくれることにある。

予期せぬ発見こそが、われわれの常識を打ち破り、科学やビジネスを、大きく進化させるのだ。

「ハカる」の第2回目は、小さな小さなデバイスの話。

MEMSは既に1兆円市場

MEMS(メムス)という言葉をご存じだろうか。Micro Electro Mechanical Systemsの略だが、適当な訳語がないままに市場規模1兆円※1を突破しようとしている。

MEMSは電子回路と機械構造が一体化されたデバイスのことを指し、実際の主な製品で言えば、圧力センサー、加速度センサー、ジャイロセンサー、インクジェットプリンターのヘッド部分、DLP型プロジェクターのDMDなどがそれにあたる。


ホームシアター向けプロジェクターとして一世を風靡したDLP方式のコアがDMD(Digital Micromirror Device)だ。DMDは光源ランプからの光を、画素毎に高速で振り分ける。

一片10ミクロン、100分の1㎜の鏡が、縦横1000枚ずつ、合計100万枚並ぶ光景を思い浮かべてもらいたい。これらが一枚ずつ制御され、わずか15μ秒できっちり24°、角度を変えるという、某国のマスゲームも真っ青の素子なのだ。

この鏡で、3色の光を自在に反射して高品質の画像を描き出す。

テキサス・インスツルメントの特許による専売品で、これまで2千万セット以上が販売されているという。累積の売上高は1千億円を軽く超えるだろう。

この小さな動く鏡たちは、DLP式プロジェクターのコアとして、液晶式プロジェクターとの戦いを続けている。

3D加速度センサー※2で自由を得たWiiリモコン

任天堂Wiiは、さまざまな業界常識を破壊した。誰をメインユーザーにするのか、そのユーザーにどんな価値を提供するのか、メーカーやソフト屋さんは何で儲けるのか、そして、ゲームをどう操作するのか。

その独特のコントローラーはWiiリモコンと呼ばれ、振り回す、傾ける、(箱の上に置いて箱を)叩く、などの新しく、でも簡単な操作の仕方を提供した。


それを可能にしたのがMEMSである「3D加速度センサー」だ。

使われているのはSTマイクロエレクトロニクス製のもの。大きさは5×5×1.5mmという。これが、コントローラーの状態(速さや傾き)をハカる。

微細なシリコンチップの中には、なんと宙に浮いた可動部分がある。厚さが15ミクロン程度の櫛状の扇子といった感じ。かなり丈夫で1万Gの衝撃にも耐え、電力も食わない。

こういった高性能のものが、低価格で手に入るようになったから、ゲームコントローラーにも取り入れられるようになった。

※1 http://mmc.la.coocan.jp/research/market/market2007/market2007.html

※2 DはDimension(次元)。日本語では3軸加速度センサーとも

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