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第43号 Teach For America

女子大生Wendy Koppの確信

世の中の困難を、新しいカタチで突破しようとする試み、それが「社会イノベーション Social Innovation」だ。

ビジネスというカタチで、となれば社会起業家 Social Entrepreneur、と言われよう。


日本でも何例かの試みが実を結び、世に紹介されるようになってきた。それでも、先進各国との彼我の差は、驚くほど大きい。


先日、リーダーシップ教育NPOであるISL(アイ・エス・エル)で、社会イノベーションの事例ビデオを見る機会があった。

その中に『Teach For America』はあった。(以降、TFA)

一言で言えばTFAは、大学卒業したての、優秀な人間たちを、教育困難校に2年間送る活動だ。


創業者はWendy Koppさん。

プリストン大学(Princeton University)の4年生だった彼女は、卒論のテーマとして教育を取り上げ「教育格差こそが現代米国の、最大の権利侵害だ Our nation's greatest injustice」と訴えた。

そしてそこで彼女は提案した。

「最高の人材を、最貧地域の公立学校に送ろう」と。


彼女には確信があった。自分の同世代の人間たちは、きっと同じ問題意識を持っている、きっとこの提案を受け入れてくれる、と。

真に優秀な学生たちは、必ずしも高給を求めてウォールストリートを目指さない、社会人生活最初の2年間を子どもたちの教育のために捧げてくれる仲間たちがきっと居る、と。

始めは政府による活動を期待し、彼女は大統領へ直訴状を送ったが、それは敢えなく却下された。更に数社※1の採用試験に落ちた彼女は、遂に、自らその活動を組織化する決意をした。

社会イノベーションの衝撃

卒業直後、21歳で彼女はTFAを設立し、翌年には早くも500名の優秀な若者たちを、数週間の研修の上で各校に送り出した。


最初に集めたスタートアップのためのお金は$250万。そのうち$50万は、かのロス・ペロー Ross Perotによるもの。

残りもメルクMerck、ユニオンカーバイドUnion Carbide、 アップルApple Computer、 ヤング・アンド・ルビカムYoung & Rubicamという錚々たる企業群が負担した。

途中、資金枯渇の危機もあったが、それらを乗り越え今やTFAは、

・毎年5,000人以上のメンバーを

・26の地域の1000校以上に送り出し

・42.5万人の子どもたちを教える

という年間予算$70Mの巨大な活動へと成長した。


人材面ではハーバードを始めとした全米のトップ校から毎年2万人以上が応募し、2500名余が厳選の上、採用される。

その若き教師たちは、短期研修の後2年間を教育困難校での活動に打ち込み、子どもたちの学習意欲や成績の向上において、明確な成果を残し続けている。


主な資金源はオーナー企業や財団、個人による寄付だが、最近では大手の一般企業も寄付者リストに名を連ねる。

製薬のアムジェンAmgen、メドトロニックMedtronic、金融のリーマン・ブラザーズLehman Brothers、ゴールドマンソックスGoldman Sachs、ワコビアWachovia、他にフェデックスFedEx、コカコーラCoca-Cola、GEなどなど。

これらの会社の目的はもちろん、単なるCSR(Corporate Social Responsibility)などではない。

※1 Morgan Stanley, Goldman, McKinsey, Bain and P&G
出所:Teach For America、「Schooling corporate giants on recruiting」Fortune(11/27/2006)、Wendy KoppのGeorgetown Collegeでのスピーチ(03/17/2008)

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