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第24号 超長編小説としてのTVゲーム(中編)

なぜ「FF」は「ドラクエ」に追いつけたのか

スクウェアの最後の望みであったFFはなぜ、シリーズ20作以上を数える大ヒットとなり、唯一、エニックスのドラゴンクエスト(ドラクエ)シリーズに匹敵するブランドとなったのだろうか。


まずは販売本数を比較してみよう。

ドラクエは86年5月発売のIで150万本、以降は全て200万本以上。一方、FFは87年末のIが52万本、2が76万本、90年のIIIで140万本と100万本を超え、91年のIV(スーパーファミコンでの第一作)で144万本。

92年末のVで遂に280万本と、3ヶ月間に出されたドラクエV(同 第一作)の245万本を抜く大ヒットとなった。

さて、ここから言えることは何か?


色々あるだろう。ドラクエはIからVまで6年半掛かったのにFFは5年で5本を開発・上市した、とか、FFは常に前作より売上本数を伸ばした、とか、FFはドラクエより早くスーファミに移行したからエライ、とか。

でも実はこれらは殆ど意味がないか間違っている。

なぜか? それはTVゲームの本質に深く関わる問題だ。

正しい問いは・・・

その本質とは、1. ゲームソフトは専用ゲーム機の台数以上には売れない、2. 顧客は平均年間5本以上のゲームソフトを買い、ゲームソフト同士は競合しない(つまり良ければ両方買って貰える)、ことだ。

であるが故に、FFはドラクエと戦う必要はなく、ユーザーに認められればよい。直接の比較は無意味だ。

しかし、対象とする専用ゲーム機をどれにするかは大問題で、所謂PS3やWiiといった「新機種」に、早く飛びつくのは実は大変危険なことだ。

一般的には、まだ数百万台しか普及していない新機種で出すより、数千万台が普及しているメジャーな旧機種で出す方が、ソフトは売れるに決まっている。それを敢えてスクウェアは出たばかりのスーファミでソフトを出した。


さて、FFの大成功に関しての正しい問いは、なんだろうか。

それは「なぜFFだけが、後発でありながら数多(あまた)のRPGの中でユーザーの心を掴み、ドラクエ級の売上を達成できたのか」であり、その時、驚くべきはFFVで280万本売ったことでなく、FFⅣで144万本売れたことだ。

FFⅣ発売当時、スーファミはたった300万台しか普及していなかった。そこでの144万本はまさに快挙と言える。そしてそれがFFVでの280万本へと繋がっていった。

戦う相手はドラクエでなくユーザー。しかもRPGは予約と最初の2~3ヶ月で殆どが売れる商品。そこでユーザーの心を掴むには・・・

この辺りの詳細は、拙著『観想力』をどうぞ。本稿では省いて、本来のテーマへと戻ろう。


まずはシリーズ最高の国内326万本、海外650万本を売るFFVIIのお話しだ。

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