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第15号 MBAに学ぶ(中編)

Japanに足りないもの: 時間と住宅

ビジネスパーソンにとって、もっとも大きな差は「労働時間」のそれだろう。都会・大企業を中心として日本には時間的余裕が絶対的に足りない。

生活面では「住宅」の差がある。ただ欧州との差に限れば、問題は「広さ」の差ではなく、「費用」と「満足度」の差だ。一戸あたり住宅面積の平均は米国が154㎡に達するが、欧州は大体90㎡前後、日本は92㎡だ。

一方、その費用には大きな差がある。土地代が数倍するせいもあり、家計消費に占める「総家賃」は欧州が15%前後であるのに対し、日本は23%に達している。また勤労者世帯の平均年収に対する住宅の価格比では倍ほどの差がある。

住宅に対する満足度を比べると、日英の満足している人の割合は、持ち家で日56%:英95%、借家で日42%:英80%。大差があることが分かる。

日本には溢れるほどのモノやサービスがあり、その多くが高品質低価格だ。しかし土地と住宅は、違う。価格は高く、満足度は極めて低い。


ただ労働時間はともかく、住宅問題は、あと20年経てば劇的に変わる可能性がある。今、団塊の世代が所有する比較的大きな住宅(100㎡超)が、20年経てば大量に市場に供給されるようになる。若年層の減少と相まって、住宅の需給構造は大きくフロー型へと動くのだろう。

現在のように、貸家で生活を初めてお金を貯めて、一生に一度(か二度)だけ家を買って、そのローンを返して終わり、ではなく、若い頃から中古の家を買い、徐々に大きな家に買い換え、子供が独立すれば小さな家に移り住む、そういう形態だ。

時間を生み出すには・・・

統計上、いわゆるブルーカラー(製造業・生産労働者)の年間労働時間は近年、米英とほぼ同じである(約1,900時間)。しかし、独仏は、違う。1,500時間強であり日本とは年間約400時間もの差がある。丸々2ヶ月分の差だ。

ホワイトカラーでも独仏伊の労働時間は、かなり短い。深夜残業などしないし、休日は文字通りだし、夏休みや年末休みが信じられないほど長い。

アメリカ人ホワイトカラーは日本人と似たり寄ったりだが、日本と逆で(?)上の人ほどよく働く。

生存競争も厳しいし、成功のリターン(=失敗のリスク)も大きい。それでも長期休暇はきっちり取る。プロジェクトの佳境であろうが、関係ない。


昔、私のBCGの同僚(アメリカ人)は研修の場(ポルトガル)でこう言い切った。

「俺はプロジェクトの真っ最中に抜けてきた。上司も部下もテンヤワンヤだ。しかしこれは俺の当然の権利である」

「全てのコンサルタントはreplaceableでありdispensableだ!」

ここまでの開き直りが、全員にあればちゃんと休めるだろう。

でも日本人は開き直れない。なぜだろう。

その1つは「自分を組織においてindispensable(必要不可欠)なものと信じていたい」というマジメで悲しい気持ちなのかもしれない。欧米人は「自分は自分にとってindispensableである」という自信の上にまずは立っている。そこが違う。


MBAでも一般に日本人は長時間「労働」となる。毎日数百ページ分の予習(英語・・・)とグループ討議(英語・・・)、毎週のレポート提出に追いまくられれば当然のことだ。

イヤ、でもその当然が、本当は当然じゃない。

英語の堪能な友人に後で聞いて済ませるとすれば? 一部の講義を完全にサボるとすれば? 更に、一学期間を全て捨てて、残りの期に単位を回すとすれば?

そこまで開き直れば、日本人だって時間は出来る。


わざわざお金払って留学して、講義をサボることを推奨しているわけではない。ホワイトカラーだからこそ、うまく開き直れば、時間を生み出す術はあるはず、と言いたいだけだ。

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