第42号 渋滞百態
日本の渋滞
「渋滞」と言えば、5月ゴールデンウィークや夏お盆の帰省ラッシュなどでの高速道路渋滞だろう。
昨今は移動時期の分散化が進んで、多少は緩和されているが、それでも数十キロにわたるノロノロ運転はざらで、通過に4時間、などという悲惨なことになる。
そう、それは、非常用の簡易トイレを持参しないといけないくらい、悲惨だ。
日本最高記録は1995年12月27日、東名高速から名神高速に掛けて起こった154km※1の渋滞。
通過するのに時速10kmなら15時間、30kmでも5時間掛かることになる。
よく知られていることだが、高速道路での渋滞原因の第一位(4割弱)は「上り坂」だ。似たようなもので第三位(1割強)には「トンネル入り口」。
いずれも、ドライバーの無意識での反応(スピードを落としてしまう、落ちていても気がつかない)が、渋滞の原因となっている。
心理には心理で。
これらの渋滞への対応としては、「この先 上り坂!」などの表示でドライバーに意識させることや、壁のデザインを道路と平行ではなく、斜めにすることで「坂であること」を意識させることなどが、ある。
後者は実際に首都高の東京港トンネルで採用されていて効果を上げているという。
世界の渋滞
世界に目を向ければ、日本では考えられない交通渋滞が山ほどある。
日本ほど信号を律儀に守る国も少ないが、イタリアや中国では「かなり」信号を軽視している。
イタリア人に言わせれば「信号が故障したら日本や西ドイツじゃ、渋滞になるだろうが、イタリアじゃあ、関係ないね」
確かにそうかもしれないが、その代わり、イタリア(特にローマより南)では毎朝毎夕、交差点がにっちもさっちも行かない状態になる。信号に関係なく車が突っ込んでくるのだから、どうしようもない。しかも3車線道路に車が5台横に並んでいたりする。
それより面食らうのは、動物渋滞。
イギリスに行けば「羊」渋滞。放牧地を道路が横断しているのだからこれまた仕方がない。あちこちで迷い羊がとぼとぼ道を歩くのを見かけるし、「羊注意」の標識も立っている。
インドに行けば「牛」渋滞。IT都市バンガローなどでも最新のビルと、過積載の自動車と、野良牛(所有者のいない牛)が町に混在する。これはクラクションくらいじゃビクともしない。待つしかない。
米国イエローストーン国立公園に行けば、絶滅の危機からようやく立ち直りつつあるバッファロー(アメリカ・バイソン 6000万頭→1000頭→数万頭)と出会えるかもしれない。
クラクションを鳴らすなんてとんでもないから、1時間半ほどはゆっくりご一緒させていただくことになるだろう。
これらに解決方法は、あまりない。
どちらかというと、こちら側の忍耐や精神力が鍛えられる、という感じだろうか。そういう精神修業の場として、これら世界の道路をお薦めする。
※1 1990年8月11日の名神高速、中国自動車道に掛けての135kmとする説もある。