第33号 三谷文庫 創設記念授業(後編)
魔法の本を、見つけよう
まずは立ち読みしまくって「好きになれそうな本」を見つけることだ。
どんな子どもにでも「魔法の一冊」が(たぶん)きっとある。文字が小さくて絵が少なくて文字ばっかりで、でも、なぜか引き込まれる、そんな本。
三女にとっては「王さまの本」がそれだった。
王さまシリーズは寺村輝夫氏(06年没)のライフワーク。1956年から40年以上にわたって31冊が刊行された。
どこかの国に住む、わがままな王さまが主人公のお話なのだが、真剣な学びや寓意があるわけではない。でも多分、そのわがままさと失敗(と成功)が楽しい、そんな本だ。
三女は小学3年生の時、これで「小さな活字がいっぱいの本」を読む楽しみを、初めて覚えた。
いろいろ試したけれど、最後まで読み通すことのなかった「小さい活字だけ」の本。そういった本の楽しみを「王さま」は無邪気に教えてくれた。それから彼女はひたすら王さまシリーズを読み続けていた。
さあ、まずは立ち読みだ。自分に合うものを「探す」だけなのだから、買う必要なんてない。
その為の最適な場所は学校や地域の図書館であり、大手の書店であり、アマゾンだ。どんどん、ちょこちょこ、読もう。
そして魔法の本を、見つけよう。
魔法の広げ方:アマゾン繋がり
首尾良くそんな本が見つかったら、次にどうするか。
同じシリーズがあればまずそれから。同じ作者で攻める手もあるだろう。もしくは同じようなテーマで、というのも。
他にも結構面白い、有力な手がある。それが「アマゾン繋がり」だ。
アマゾンではどの本を選んでも、必ず「この本を買った人はこんな本も買っています」情報が出る。これを辿っていくわけだ。
王さまシリーズの第一作「おしゃべりなたまごやき」を買った人は、「エルマーのぼうけん」も買っている。うんうん、これも良い本だよねえ。
この著者は他にも本、出してたっけ。
ルース・スタイルス・ガネット、をクリックすると「エルマーと16ぴきのりゅう」や「エルマーとりゅう」が出てくる。
ああ、この三部作が代表作なんだ。講談社から英語でも出ている。コメントを読むと、中学生程度で読めそうな英語みたいだな。
こうやって、魔法の本の幅を拡げていく。
慌てる必要はない。本を読む習慣さえ付けば、その内、興味の範囲は拡がってくる。
私のように、高校卒業までほとんどSFと宇宙の本しか読まなかった、なんて偏る場合も出るかもしれないが。それでも、多分OK。
楽しく量をこなしていれば、きっと「読解力」はついている。
アマゾンじゃんけん
子どもたちにアマゾンへの興味を持って貰いたくて、アマゾンを使った遊びを考えた。
ルールは簡単。
自分の選んだ本の、アマゾンでの「ランキング」の数字が「大きい」方が勝ち。つまり順位の低い、より売れていない本を選んだ方が、勝つのだ。
但し、アマゾンに登録してなければ負け、ランキングが出ていないものも負け。
負けてもちょっと嬉しい、ジャンケンだ。
授業が終わっても、子どもたちが集まってくる。
ボクの本は何位? カチャカチャ・・・おー、23万位だ。
私のは?カチャカチャ・・・2000位だよ。
あ~、負けちゃったぁ。でも、何百万冊もあるのに2000位なんて凄いね。
子どもたちに必要なのは、本への興味と読解力。
それは「魔法の一冊」から始まる。
図書館へ行こう、立ち読みをしよう。そしてアマゾンを使いこなして、どんどん進んでいこう。
これで、「本の不思議」のお話しを、終わります。
質問はありますか~。
初出:CAREERINQ. 2007/09/28